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大事なのは、教員自身が楽しむこと。まずは、やってみること。 〜隠岐島前高校コラボレーション授業実践報告会「秋の探究祭り」レポート(後編)〜

 

大事なのは、教員自身が楽しむこと。まずは、やってみること。
〜隠岐島前高校コラボレーション授業実践報告会「秋の探究祭り」レポート(後編)〜

 

隠岐島前高校では今年度、教科の枠を越えたコラボレーション授業に取り組んでいます。11月2日(火)には、その実践事例を題材に学び合うオンラインイベント「秋の探究祭り」を開催。「教科×教科」「教科×地域」「教科×総探(総合的な探究の時間)」の実践事例を紹介しつつ、50名あまりの参加者もいっしょになって語り合う時間となりました。その様子(後編)をレポートします。

【登壇者】
大賀 学先生 隠岐島前高校教諭(主幹)
吉岡裕司先生 隠岐島前高校教諭(探究推進担当)
内田勇貴先生 隠岐島前高校教諭(数学)
田中里奈先生 隠岐島前高校教諭(埼玉県より派遣・数学)

 

「「数学×国語×地域」で多角的な探究学習を実践

 
続いて、数学の内田勇貴先生が、「教科×総探(総合的な探究の時間)」の実践事例として、「数学×国語×地域」を掛け合わせた授業について発表しました。

内田先生も、隠岐島前高校に今年赴任したばかり。1年生の担任で、総合的な探究の時間「夢探究」では、「日々の授業とのつながりをもたせることを大事にしている」と言います。1年次は「問いを立てる→仮説を立てる→仮説を検証する」という探究の手法やサイクルを学び、このうち「仮説・検証」の授業実践について紹介しました。

内田:仮説検証の手法を学ぶなかに数学と国語という教科の視点を組み込み、地域の方にゲスト講師として来てもらうことで、地域の視点も掛け合わせました。授業の導入では、島前・知夫村の石垣のスライド写真を生徒たちに見せ、「この石垣って何のためのもの?」と問いかけて考えさせます。

内田:続いて、牧畑の繁栄について資料を読んで学びます。これは、国語科の「複数の資料を正確に読み取り、関連づけて考える」という観点になります。次に、数学の視点で仮説・検証を体験します。「なぜ知夫里島の牧畑は衰退したか?」という問いに対して、仮説を立て、それを「モデル化」という数学的手法を使って検証していきます。

内田:2時間連続の授業の後半は、ゲストトークの時間です。知夫村の教育委員会の方に来ていただき、大賀先生と二人で対談形式でトークをしていただきました。そして、ゲストトークを聞いたうえで、生徒は改めて自分たちの仮説を検証しました。生徒からは、「今している勉強が何かしらにつながると考えると、勉強が面白くなると思った」「日常生活を振り返ってみると、意外と数学的な考えをしているなと思った」などの声が寄せられました。

 

教員同士のちょっとした会話からアイデアが生まれる

 
実践発表に続き、「コラボレーション授業を生み出す意図や生まれる背景」をテーマに、パネルトークが行われました。

澤:吉岡先生は探究推進担当2年目で、コラボレーション授業に積極的に取り組んでいらっしゃいます。そのモチベーション、原動力は何なのでしょうか?
吉岡:コラボレーション授業をやってみたときに、生徒の表情がすっごく良かったんです。教科横断で扱う内容は教科書に載っていないことや切り口であるケースが多く、生徒が興味・関心を示してくれる。それが、一番のモチベーションになっています。

澤:先生自身も探究されている感じですか?

吉岡:はい。次はどんなコラボができるかな、どことつながれるかなという視点で他分野を見るようになりました。楽しいですよ。

澤:コラボレーション授業をするようになって、職員室での会話に変化はありましたか?

吉岡:私のコラボレーション授業を見に来ていた先生たちが、その後、「国語と数学なら何ができるかな?」という会話を楽しそうにしていて、こういうところから次の挑戦が生まれるといいなと…。授業を開いていろんな人に参加してもらい、ヒントにしてもらうことって大事だなと思いました。

澤:若い先生が多いからか、みんな積極的に授業を見に来ていますよね。コラボレーション授業が隠岐島前高校のカルチャーになってきている感じがします。

吉岡:そうですね。職員室内に各教科の教科書をまとめて置く場所を設けたのですが、その近くでコーヒーでも飲みながら教科横断の話ができるようなスペースを作りたいと思っています。

澤:田中先生は、埼玉にいる頃から探究学習をやられていたんですか?

田中:そうではないです。コラボレーション授業をしようと思った最初のきっかけは、吉岡先生の化学と世界史の授業を見学して、「こういうのやっていいんだ!」と思ったこと。そこから教科横断型授業をやってみたいという熱がどんどん高まっていって、面白い事例はないかなと探すようになりました。初めてやったのが、英語とのコラボレーションでした。食事の席で吉岡先生に「今、確率やってるんですよね」と話した流れで、ふと思い出したのが誕生日の確率についての英文でした。私自身が高校時代に読んだ英文なんですが、とても印象に残っていて。吉岡先生に話したら「それいいね!」と言っていただき、その英文を使いながら誕生日の確率を数学で求める…という授業をやりました。

澤:やっていいんだと気づいてから、いい意味で調子に乗ったわけですね。

田中:はい。ちょっとした会話からコラボレーションのアイデアが出てくるのが面白いですよね。

澤:いわゆるミーティングじゃないところで生まれるんですよね。内田先生は、隠岐島前高校にそういった雰囲気があると感じますか?

内田:昼ごはんの時間などに出る話題が、アカデミックなことからおもしろいネタまで、教科に関することが多いなと感じます。

澤:数学の授業で、生徒には教科横断について話をしたりするんですか?

内田:これは化学や物理とつながるところあるよ、みたいなことは割とまめに言っていますね。

澤:一般的に、総探と教科は別のものと捉えられがちですが、混ぜることに抵抗はないですか?

内田:数学は日常生活と結びつけて教えるのが難しい科目ですが、導入を工夫することで生徒が興味をもってくれるという点においても、とても意味があると思います。

澤:チャットで、「教科横断の授業は、総探もしくは教科のどちらの時間を使ってやっているのですか?」という質問が来ています。

吉岡:私の場合は、化学の時間を使ってやりました。単元の最後に、教科書にはないオプションとして付け加えました。

内田:今日、紹介した授業については、「総探1時間+国語1時間」の2時間連続で展開しました。

澤:科目をフレキシブルに使い、相談しながら組み合わせてやっているという感じですね。ありがとうございます。

 

「このイベントも、僕らの探究。構えすぎず、やってみよう」

 
その後、「教科×教科探究」「教科×地域探究ルーム」「教科×総探探究」「コラボレーション探究」4つのブレイクルームに分かれて登壇者を交えて質疑応答・意見交換を行いました。

最後は、司会の澤さんが「今日感じたモヤモヤや生まれた問いについて考えることで、きっと次の問いが出てくると思う。今日のイベントも、僕らにとっての探究。皆さんも、構えすぎずにワクワクしながらやってみてほしい」と呼びかけ、「秋の探究祭り」本編は一旦終了。その後は「放課後」として希望者が集い、秋の夜長に熱く語り合いました。

皆さんとコラボレーション授業を探究した濃い時間は、登壇した先生やスタッフにもとても有意義なものでした。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。近日、第2回も開催予定ですので、興味のある方はぜひご参加ください。

 

(取材・文 笹原風花

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